養生医学

食欲コントロール法

2017年01月06日

 

 野生の動物は必要な分だけ食べたら、それ以上食べません。満腹でも好きな物が目の前に出てくると別腹で食べるのは人間と人間に飼われている家畜だけです。

 

○ 食欲とは

 野生動物は必要以上に食べないのに、人間はナゼ食欲に勝てないのでしょうか。野生動物と人間では何が違うのでしょうか。

 大きな違いは、野生動物では、その種族に決められた食物だけを生命維持のために食べます。たとえば「パンダは笹の葉、コアラはゆうかり」と言った具合です。しかし、人間は幅広い食物を生命維持よりも、塩、油、火を使い調理して食べるようになり、その上、砂糖で甘味を煮物、飲み物に利用するようになり、食事を楽しむために食べています。特に砂糖の存在が大きいと思います。

 現在の日本人はグルメを追い求め美食飽食に酔い、その結果過剰な食欲となっています。

 

○ 食欲を増す要因

 現在の日本人は、健康を維持するために食材を求めるのではなく、グルメ、盛り付け、香りを楽しみ、アルコールで、その場の雰囲気を楽しんで食べています。

 特に砂糖を食事、間食へふんだんに使うようになり過食症が増えたように思います。

 又、一方では宴会、祝勝会とかストレスでやけ食いにより食べ過ぎるケースもあります。

 もう一つ、食事の食べ方として、血糖値が上がると満腹中枢が満足し、下がってくるとお腹が空き食事を要求します。そして、食事を開始して血糖値が上がり始めるまでに15~20分を要します。その意味でゆっくり良く噛むことが大切で、良く噛めば唾液が良く混ざり、澱粉の消化がスムーズに行われます。

 

○ ニホンザルによる実験

 先日、ためしてガッテンで面白い実験をしていました。ニホンサルに蒸かしたサツマイモを400g出しました。食べたのは普段と同じ100gでした。しかし、ハチミツとバター、出しで味付けしたサツマイモを400g出したところ全部平らげました。

 甘みや油脂、だしなどおいしい物を食べると脳内でβエンドルフィン(快感物質)が出ることがわかっています。これが「過度の食欲」の原因のひとつと伝えていました。

 味の付いていない物を食べると前頭前野は赤くなるが、甘い美味しい物を食べると前頭前野は青くなり食欲が増す。

 もう一つ、人間には「ストレス」「睡眠不足」でも食欲をアップさせるグレリンというホルモンが増えることがわかってきました。その上、グルメ情報や香り、見た目、アルコールなど現代人は「過度な食欲」を大きくさせるものに囲まれているのです。

 

○ 脳内にヒスタミンが増えると食欲を抑える

 脳内にヒスタミンが増えると食欲を抑えるが、ヒスタミンは、鼻づまり、痒みなどのアレルギー症状を引き起こす物質です。

 もう一つ、口から摂ってもヒスタミンは脳へ届かない(血管脳関門と呼ばれるゲートを通ることができない)のです。従って口から摂ることが出来ません。脳の中でヒスタミンを作らなければならないのです。

 脳の中でヒスタミンを作る方法はあるのでしょうか、番組の中では、2チームに分け、片方のグループには、食事の前にガムを10分間噛ませ、一方には噛ませずに食事に入りました。するとガムを噛んだチームは食べる量が少なくても満腹になりました。ガムとかこんにゃくなどを良く噛むと脳内のヒスタミンが増え食欲を抑えることが出来たのです。

 実は「噛(か)むという行為」がなんと脳の中だけでヒスタミンを増やすことがわかってきました。

噛んだ刺激が脳内の結節乳頭核という部分に届きヒスタミンを量産させるのです。そしてヒスタミンが満腹中枢を刺激することで、満腹感が高まるという仕組みです。

 さらにうれしいことには、脳内のヒスタミンは内臓脂肪も減少させることもわかってきました。昔から「よく噛みなさい」と言われてきましたが、噛むことには、直接満腹感を高めてくれるという

効果があったのです。

 

 従って、一口30回噛める程度のご飯を口に入れる。そして、表を作り30回噛めたときは○、噛む回数が少なかったり、多かったときは×印をつけ、毎回30回噛めるように努力します。

「噛めば噛むほどいいのでは?」と思いがちですが、30回程度が長続きしやすいこと、さらに30回ピッタリで飲み込めるひ一口の量を探ることで口数を増やすという効果があります。

 慣れるまでは「修行」のような食事と感じますが、慣れてくれば、薄味でも自然の食材の味が

よくわかるようになるといいます。

 

・食べて脳内ヒスタミンを増やす!、

 栄養調査を元にした研究から、食材に含まれる、ある成分を多くとると食事の量が減ることがわかってきました。又、ネズミの実験からも同様のことが確認されました。その成分とは「ヒスチジン」。

 アミノ酸の一種で、ヒスタミンの原料になります。ヒスチジンは血液脳関門を通過することができ、

脳内でヒスタミンに変わるのです。

 ヒスチジンが多く含まれている食材は、まぐろ、かつお、ぶり、さば、さんま、などの青魚です。

※ 1日にどれくらい食べれば効果が出るのかについては現在研究中です。

 

○ 野菜を先に食べる ためしてガッテン

 先に野菜、海藻を食べると血糖値が上がり始めて食欲を抑えることが出来る。血糖値が上がり始めるまでに15~20分要するから、野菜を食べてからご飯を食べる。ご飯の量を抑えることが出来る。

 

○ 食養から見た大食の予防策

 食欲がある人は、塩気の効いた人(陽性タイプの人)です。普段から主食中心の食事で、しかも、常時味付けの強い食事を好む人です。又、一般の食事を食べている人では、動物性蛋白を多く摂って、野菜や果物、甘い物をそれほど摂っていない人です。

 良く噛んで唾液を充分に混ぜ容量が増えるから胃が満たされます。

 良く噛むと食事時間が長くなり、血糖値が上がり始めるから食欲を抑えることが出来ます。

 野菜の水炊き(塩味なし)だけを腹一杯食べる。無塩食により胃液が薄くなるから食欲が落ちる。

 

○ ためしてガッテンの方法を無双原理で検討

 以前の同番組では、ゆっくり噛むと血糖値が上がり、満腹を感じて食べ過ぎを抑制すると報じていました。今回は良く噛むとヒスタミンが出来、食欲中枢を抑えると伝えていました。どちらが正しいか、それとも両方が作用して食欲を抑えるかは現時点で判断は出来ません。

 それよりも良く噛むことにより、唾液が充分に出て体液がアルカリに傾き、しかも良く噛むことにより体液が陽性化され、脳細胞が正常に働くと言う見方も成り立ちます。

 

 味の付いていない食べ物を食べると前頭前野が赤くなり、甘味を加えた食べ物を食べると前頭前野は青くなると伝えていましたが、これは、「脳内へ砂糖の陰性を含んだ血液が入ると満腹中枢の機能を低下させ、食欲を抑えることが出来なくなる」と見ます。

 

 先に野菜を食べると食事の時間が長くなり、主食を食べている途中に血糖値が上がり始めるから、食欲中枢が満腹を感じて食欲が抑えられるのは正しいと思います。食養でも大食の人に野菜の水炊き(無塩食)を勧めて過食を防ぐようにしています。

 

 番組ではヒスタミンの前駆体、ヒスチジンを多く含む食材の動物性食品を摂ると脳内でヒスタミンが出来て食欲を落とすことが出来ると言っていましたが、動物性食品は血液を酸化させ、塩気が入るから、ヒスチジンが脳内でヒスタミンに変わっても食欲を落とすことが出来るか疑問です。

 

 過食の人は、塩気の効いた陽性タイプの人で、甘い物、アルコールなどを摂り酸化した血液が脳へ上がり、食養中枢が正常な働きが出来ない状態だと考えます。従って食べ過ぎて血液が酸化しても過食症になることもあります。